「人を動かす」
この本は19 年に出版され、現代までずっと売れ続けている良書で、納税額歴代一位の実業家の斎藤一人氏は「経営を勉強する上でこの本を越える本はない」と断言するほどの良書中の良書です。
これだけ変化の早いビジネスの世界において時を経て評価され続ける時点でその良書ぶりは窺い知れると思いますが、人が成功するのに欠かせないのは何でしょうか?
月並みですが「努力」「行動力」など様々挙げられるでしょう。
しかし、もっと時間対効果も費用対効果も高い方法があります。
人を動かすことです。
自分が頑張ると言っても1日の持ち時間は24時間なのでどうしても限界があります。
しかし、他の人の時間を自分の成功のために使うことができればプラス24時間、もう1人増やせば48時間と増えていきます。
こう考えると人を動かすことには計り知れないほどの価値があることがわかります。
本書に書いてある方法を実践すれば才能ある人があなたの元に集まってきてあなたのために動き始めるため、ぐんと成功確率が上がるでしょう。
しかも具体的な方法を試して成功した事例が数多く紹介されていますから説得力があり、どんな時に実行すればいいのかすぐにわかります。
これからどんなスキルが求められるのかわからないと悩む人も多いですが、本書に書いてあることは効果は絶大で初期費用も一切かからず、誰でもできることばかりです。
教育者、指導者、経営者はもちろんのこと後輩がいる人や恋愛に悩んでいる人も恋愛にも応用できますので必読の書です。
それでは早速みていきましょう。
結論から言うと人を動かすための条件はたった一つ「相手の自己肯定感を高める」ことだけです。
具体的に相手の自己重要感を高めてやる方法は以下です。
1、相手を認める、褒める(事実を具体的に)
2、名前を覚える(その人に関心を持つ)
3、相手の話を聞いてあげる(相手に話させる)
4、笑顔をたやさない。
反対に絶対にやってはならないのは相手の自尊心を潰すことで具体的には以下です。
・議論(口論)
実は本書にはもっと多くの項目が書いてありましたが、よく読むと重複すると思われるものもありましたので上の項目にまとめています。
まず、相手の自己重要感を高める方法について述べていきます。
1、認める、褒める
褒めると言う行為は相手の自己重要感を高めるのに最も適した行為で、アップルのスティーブ・ジョブズや豊臣秀吉は相手の自尊心のありかを見つけて褒める達人だったと言われています。
まず褒めるときに注意すべきなのは相手のどこが素晴らしいのかを具体的に言って褒めると言うことです。
思ってもないことを言うのはただのおべんちゃらであり、相手もいい気分がしないので効果もありません。
以下は本書で挙げてある褒めることで成功した人の例です。
事例1)歌手として大成した盲目の少年
アメリカのある小学校でクラスで飼育していたネズミが脱走したとき、教師はある盲目の少年に失踪したネズミの捜索を頼みました。
教師はこの少年は盲目というハンディキャップを抱えながら優れた聴覚を持ち合わせていたことを知っており、期待通り少年はネズミが這う音を聞きつけて見事にネズミの逃げ場所を突き止めました。
自分が優れた聴覚を持ち合わせていることを初めて自覚したその少年はその後歌手としての道を歩み、誰もが知るスティービーワンダーとして大成しました。
「自分の持つ能力を先生に認められたことが転機だった」
と彼は回想しています。
事例2)小説家を褒めて小説家としてデビューした男
ホールケインという小説家は鍛冶屋の息子として生まれ学歴もなかったが、イギリスの詩人ダンテ・ゲーブリエル・ロゼッティに傾倒しており、彼をたたえる論文を書いて本人に送りました。
するとロゼッティ本人はいたくこの少年をいたく気に入って呼び寄せ自分の秘書にしました。
これによりケインは様々な文壇の有力者、パトロンとコネを持つことができ、腕を磨き、文筆家としてデビューできたのです。
彼が残した資産は250万ドルに上ったと言われますが、彼がロゼッティに賛辞を送らなければその後の彼の活躍はなかったでしょう。
事例3)知り合いの叔母から高級車をもらった女性
褒める対象は何も本人だけじゃなくていいのです。本人が大事にしているものを褒めるのも効果があります。
ある人が奥さんと年老いた叔母の家を訪ねた際にこう言いました。
「私の生まれた家も、ちょうどこういう家で絵した。立派な建物ですね。なかなかよくできています。広々として。」
実はこの叔母は資産家であった夫を早くに亡くして長年孤独の身であり、唯一住居が家族の思い出の詰まった大切な財産でした。
そんな時に気を利かせて訪ねてきてくれた姪御にさらにこだわりの家を褒められた年老いた叔母はすっかり気を良くして高級車のプレゼントをもらったそうです。
どんなろくでなしや悪党でも一つくらい褒めるところはあるので、その長所を見つけて褒めてやることで相手は自分の才能に気づきやる気を出して努力するようになります。
いいところとまではいかなくても頑張っているところ、過程を褒めても効果があります。
欠点というのはなかなか治らないのでそれを指摘して直させるよりもいいところを褒めてその人に合った仕事を提供してやるのが最適解です。
どうしても直して欲しい場合はいいところを褒めた後で指摘するといいでしょう。
褒めるというのは麻酔のようなもので、褒めた後で欠点を指摘してやると痛い言葉でも相手に効くし、悪いところも治っていくのです。
2、その人に関心を持つ(名前を覚える)
相手の自己重要感を高めるためには「その人に関心を持つ、あなたに興味がありますよ」という意思表示が大事なのですが、最も効果がある方法が名前を覚えるということです。
当たり前のことだと思った方は本当にわかっているでしょうか。
取引先の受付の人、掃除当番の人、宅配に来た人などの名前まで覚えているでしょうか。
実際に人の名前を覚えるということを徹底することで政界に進出し、民主党の全国委員長になり、アメリカの郵政長官になり多大なる影響力を持った人物がいました。
男の名はジム。
フランクリンルーズベルトは自分が大統領になれたのは彼のおかげだと述懐しています。
ジムは高校にすらいかなったが、名前を覚えることに注力し、次に会った時には1年後でもその人の肩を叩いて家族や友人関係のことを尋ねたりすることができました。
彼によると生涯で5万人の名前を覚えたということです。
ルーズベルト大統領の大統領選の際には覚えた名前を全て名簿に落とし、その人の名前とプライベートの話題とともに支援の手紙を送りました。
さらに州ごとに列車移動して支援者を集めて集会を開いて一人一人と対話し、終わると次の町、次の州と回りました。
彼が選挙期間中手紙を送った先や挨拶をした人数の総数は数万人だということですが、もちろんこの中にはジムのためにルーズベルトを支持するという人も多くいました。
日本でも中卒で総理大臣になった田中角栄は並外れた記憶力で支持者は同僚や上司、ライバルまでの名前はもちろん、誕生日、趣味、なんと家族の誕生日までも覚えており、プレゼントも欠かさなかったということです。
彼らはみんな他人の名前には関心を持ちませんが、自分の名前には大いに関心を持つということを早くから知っていたのです。
少しあった人の名前を覚えて、連絡する、是非ともやってみてください。
3、相手の話を聞いてあげる(相手に話させる)
2の相手に関心をもつにも通じるのですが、関心を持っていることを示すもう一つの有効な手段は相手の話を聞いてあげることです。
これも当たり前のことに思えますが、きちんと相手の話に関心を持って聞く人は少ないものです。
事例)クレーマーをファンにした電話交換手
ニューヨーク電話局区内に電話交換手泣かせの悪質クレーマーがおり、滞納した電話料金の催促をした係員に聞くに堪えない罵詈雑言の嵐を浴びせるのが日課でした。
この会社の交換手で問題解決の名人と謳われた人物をこのクレーマーに担当させました。
最初は相手の言い分にじっくりと耳を傾け、心から同情の意を表し、3〜4回会うまでに至りました。
この時には相手はすっかり気を良くしており、滞納した料金も全額払っていました。
このクレーマーはお金が惜しかったわけでもなく不平があったわけでもなく、自分の話を聞いてくれる相手が欲しかったのです。
担当者によって自己重要感を満たされたおかげで彼が作り上げた不満が払拭され、料金も回収できたのです。
面接でもそうですが、受験者はみんな自分が聞かれるのが当然だと思っているかもしれませんが、自分から面接官に関心を持って質問し逆に面接官の話を聞いてみてください。
そんな受験者は珍しいでしょうから、印象に残るのは間違いありません。
面接で自分のことばかり話したがる受験者、話したがりのセールスマンは是非この方法を試してみてください。
4、笑顔をたやさない。
笑顔の効用は本書の以下の言葉が的確に表しています。
「元手がいらない。しかも、利益は莫大。与えても減らず、与えられた人は豊かになる。
一瞬の間、見せれば、その記憶は永久に続く」本書より
事例)笑顔を心がけて人間関係も収入も爆上がりした男の話
ニューヨーク株式場外仲買人ウィリアムは結婚して18年、妻に笑顔を見せたことがないほどの気難しがり屋でした。
ある講演会で笑顔の重要性と効果を諭され、笑顔を心がけるようになりました。
するとたちまち人間関係が良くなり、人が集まるようになり、チャンスに恵まれるようになったので収入も増えたとウィリアムは述べています。
仕事や人間関係に悩んでいる人はまずは笑顔がきちんとできているか自身を振り返ってみましょう。
面白いから笑うのではなく、相手を喜ばせるのが笑顔です。
身近な人に自然な笑顔もできずに面接や取引先に愛想笑いを取り繕ってもすぐにバレるものです。
家族など身の回りの人に感謝をして笑顔で振る舞うように心がければ職場でも取引先でも自然な笑顔を出せるようになり、仕事も人間関係もうまくいきます。
ここまで成功に必要なのは人を自分のために動かすことで、そのためには相手の自己重要感を高めてあげることが大切だという話とその具体的な方法を話しました。
反対に絶対にやってはならないことは相手の自己重要感を下げることで、基本今まで上げたことの逆をしなければいいということになります。
本書が挙げてある例の中でついついやってしまいそうなことなことがあるのでそれについて書こうと思います。
そのやってはいけないこととは「議論で相手を打ち負かす」ことです。
興味深いのは本書はアメリカ人が書いたものだと言うことです。
アメリカ人といえば議論、ディベート好きのイメージがありますが、そんなアメリカの成功者でも人を動かすためには議論に挑んではならないというのが興味深く思います。
「議論は、ほとんど例外なく、双方に、自説をますます正しいと確信させて終わるものだ。
議論に勝つことは不可能だ。もし負ければ負けたのだし、たとえ勝ったにしても、やはり負けているのだ。なぜかといえば、仮に相手を徹底的にやっつけたとして、その結果はどうなる?
やっつけた方は大いに気をよくするだろうが、やっつけられた方は劣等感を持ち、自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう。議論に負けても、その人の意見は変わらない」
議論の有益性については本書に書かれているこの文章が全てです。
本書の例を挙げるまでもなく皆さんも経験はあるのではないでしょうか?
Twitter上で物申す系やネトウヨ、ネトサヨ系、アナログ先生と議論をしてその人が劇的に変わったでしょうか?
自説を改めるどころか大勢から非難され、攻撃された結果恨みが募りますます自説を強固に展開している例を多くみます。
僕も大学時代のゼミの指導教員が議論好きで相手を打ち負かすのが生き甲斐のような人でした。
その特性が災いして学部内に敵を作り自分がプロジェクトを立ち上げた時は誰も助けてくれない、そしてそれに腹を立てて学生にも当たり散らして無関係な人からも嫌われるという困った人でした。
彼はずっと理解してくれない周りのせいにしていましたが、自分に非があるのは明らかでした。
こう考えると議論して打ち負かすことには何の徳もないどころか、むしろ恨みを買って逆効果になる危険性さえあるのです。
そんなことに時間を使うよりも自分の立てた目標や好きなことに打ち込んだ方が生産性が高いに決まっています。
自分の自分の目標と自分のチンケな自尊心、どちらを優先すべきかは明らかでしょう。
自分には何の才能もないと思う人は才能を磨くのは大変なのでまず相手の自己重要感を高めるというスキルを磨き、実践してみてはいかがでしょうか。
ずっと続けていれば才能がある人が集まってあなたのために働き始めるでしょう。
それでは!
「人を動かす」