その例文、外国人に通じません! 〜「カレーは辛いです」「毎日お風呂に入ります」「野球は人気があります」〜|日本語3.0

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その例文、外国人に通じません! 〜「カレーは辛いです」「毎日お風呂に入ります」「野球は人気があります」〜

今回は日本語の授業をしていて通じなかった例文、例文を通した慣習についてご紹介します。

 例文というものは学習者の理解を促すために文法や語彙のプロトタイプ的なものでなければなりませんが、日本人の感覚で例文を用意してしまうと全然伝わらない場合があります。

 そこで今回は僕が用意して失敗した例文をご紹介したいと思います。

 学習者はアメリカ人、イタリア人、ブラジル人、イスラエル人、インド人、中国人、ベトナム人が相手でした。


「カレーは辛いです」

 形容詞の導入をしている時「辛い」という言葉を引き出したくてkeynoteのスライドに「甘い」「おいしい」「辛い」「酸っぱい」など味に関する言葉を並べた上で「カレーはどんな味ですか?」と質問したことがあります。


 すぐに「辛いです」という答えが出るかと思いきや無反応。自分の説明がまずかったのかなと思ってもう一度文法の説明を試みようとする時イタリア人女性の学習者から

「What is this?」

と怪訝そうな顔で質問してきました。

 その時イタリア人の彼女の他にブラジル人、イスラエル人の学習者がいたのですがみんな食べたことがないということでした。

 僕が日本語学校にいた時、中国、ベトナム、ネパール人が主な学習者でしたが、ベトナム人はほとんどの人がカレーを食べたことがないようでした。
 食べ物はかなりお国柄が現れるので、例文に使うのは避けた方がいいかもしれません。


「カレーはインドの食べ物です」
「カレーはインドで有名です」


カレー繋がりでもう一つ、確か上のような例文を出した時インド人の学習者が「私はカレーを食べません」と言いました。

それに対して

「あなた本当にインド人ですか?」

と別の学習者が言ったらムッとした表情を浮かべ「インド人もカレー食べない人は多いです」と言いました。


 彼によるとインドでも南インドの方では全くカレーを食べない、食べたことがないインド人もかなり多いということです。

 ちなみにですが、インドはヒンズー教徒なので牛は神なので食べないと思っている人も多いですが、とんでもありません。

 インドには2億人近くのイスラム教徒が住んでいるので牛を食べます。日本人よりも多いわけですから大変な人数で需要も年々増加しており、日本の畜産業も注目している市場です。

 しかし、やはり店頭で堂々とは販売できないようでイスラムのコミュニティ内での売買か今ならネット販売が主流のようです。



「野球は1番人気があります」

 確か最大級「〜が1番〜」の構文を導入していた時にこの例文を提示しましたが、全くピンと来てないようでした。

 それもそのはず野球が人気の国というのは世界的に圧倒的に少数派で日本の他には韓国、台湾くらいでしか人気がありません。
 スポーツも結構国柄が分かれるのですが、イギリスやインド、スリランカなどではラクロスでオセアニアではラグビー、アメリカではアメフトです。
 スポーツの中で世界的に人気と知名度を誇るのはやはりサッカーで、日本語学校の主な学習者であるベトナム、ネパール、中国人学習者たちの中でも突出して人気がありました。


「私は毎日お風呂に入ります」

「入ります」というと共起する助詞としては「風呂」が浮かぶかもしれませんが、「風呂に入ります」という例文も通用しません。


 というのも欧米圏をはじめ中国、ベトナム、ネパールなどではシャワーで済ませる国が大多数で、毎日湯船に浸かる習慣がある国は世界的にも少ないのです。


 海外に行ったことがある人はわかるかもしれませんが、海外旅行に行くとバスタブすらないホテルも多くあります。

 シャワーで済ませるというと不潔に感じるかもしれませんが、人が入った湯船にさらに入る方が不潔だと感じる外国人も多いようです。



ジェスチャー
 数字か日にちを教えていた時のことですが、「6」という答えを学習者が言い淀んでいるときにヒントとして次のようなヒントを出していました。
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 何度もやっているのに全く反応なし、しばらくしてイスラエル人の学習者が怪訝な表情で「あなた何やってるの?」と聞かれて汗顔。

ジェスチャー、特に数字は国によって全然違うのでした。

ちなみに中国で「6」はこれです。
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日本では「いいね」を表すこのジェスチャーもイランでは「死ね」という意味です。
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特に海外に赴任する先生は何気ないジェスチャーが侮辱の意味を表すこともあるので事前によく調べていくほうがいいでしょう。

その他海外でやってはならないジェスチャー
https://allabout.co.jp/gm/gc/472821/

掃除をさせる

日本語学校に勤めていたときネパールの学生が「バイト先で差別された」と相談してきた時がありました。

何事か聞いてみると「店長が自分に掃除をさせた」ということでした。

実はインドやネパール、スリランカなど南アジアの国々では現在でもカースト制度、またはそれに準じた制度が根強く残っていますが、掃除は最下層のステータスの人間がする仕事だという認識なのです。

ネパールの留学生が掃除を命じられて差別だと感じたのはそういった文化背景があったからでしょう。

海外のインターナショナルスクールで日本語の先生がインドの子供に掃除をさせたところ親が「我が子を侮辱した」として教師を相手に訴訟を起こしたという事例もあります。

個人的には掃除は身分が低い人間がやるという南アジアの慣習の方が差別的で撤廃すべきだと思いますが、その国で知らずに掃除をさせると大問題になるので注意が必要です。


以上、外国人には通じない例文について紹介してきました。

断っておきますが、今回挙げた事例は例文として不適切だということであり、使ってはいけないという意味ではありません。

特に日本で生活する日本語学習者にとって日本の慣習を理解することは大事です。

例文以外の方法で紹介することでトラブルを避けることにもつながるでしょう。

2022.08.18 | コメント(0)
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