現職日本語教師は全員国家資格に移行しなければならないのか? 〜文化庁に問い合わせてみた〜|日本語3.0

インフォメーション

現職日本語教師は全員国家資格に移行しなければならないのか? 〜文化庁に問い合わせてみた〜

「日本 文化庁に問い合わせてみました」

前の国家資格化の記事についていくつか個別に問い合わせが来たのと僕も実は一部解釈が間違っていたかもしれないので、訂正も兼ねて今回記事にしようと思います。

公認日本語教師資格の創設で現在の日本語教師は失業する。
http://hayato55.com/article/188960044.html?1631423926

まず、最初に現段階で確定していることをまとめてみます。

確定事項
・令和6年から公認日本語教師という国家資格が創設される。
・国家資格は筆記試験と実習の二種類をパスすることで合格できる。
・国家資格を得るためには一部試験実習などの免除はあれど既存の日本語教師資格の移行措置はない。
・現職教師は筆記試験2を合格すれば取得可能。
・個人で教えている教師には公認教師は必要ない。

で、最大の焦点は次です。

・告示校勤務で現職を離れている教師やこれから告示校で働こうとする教師は国家資格を取得しなければならないのか、取得しなければどうなるのか。


報告書の中で該当しそうな箇所は以下です。

一定数以上の公認日本語教師の配置を必須とするこ とが要件として求められることとなるが、その際には、十分な移行期間を設定し、 現職の日本語教師への配慮を行う。

「一定数」、この言葉の解釈が分かれていて実は僕も間違えていたかもしれないのですが、注意すべきは「一定割合」ではないと言うことです。

「割合」と聞くと「公認日本語教師が30%いれば残り70%は公認教師の資格を取得しなくていい」そんなニュアンスに受け取れるし、そう思っている人も多いようですが、「人数」という言葉が使われている点に注意してください。


つまり一定数以上というのは、例えばですが「現行では学生20人あたり1人の有資格者ということが15人あたりの学生に公認教師を1人という形で移行する」という意味なのかもしれません。

つまり旧資格者と公認資格者のそれぞれの人数と言う話ではなく公認資格者と学習者の人数という話で、旧資格者は次の制度設計に全く組み込まれていないかもしれないのです。

しつこいですが「割合」と言ってしまうと必ず混乱しますので、「人数」と書いてあることに注意です。

「文化庁は今の日本語教師が全員公認教師に移行する必要はないと言っていた」という主張をしているYoutube動画やブログ記事、Twitterをいくつか見ましたが、それではなぜ報告書には旧資格者について全く言及がないのでしょうか。

現職日本語教師が移行しなくていいならそれこそ報告書に「人数」ではなく「割合」と書いたほうがわかりやすいのではないでしょうか。


憶測であれこれ想像しても意味がないので、早速文化庁にメールで問い合わせてみました。

質問は「現資格保有者はみんな公認教師に移行しなければならないのですが」で、以下が回答の一部です。

「全員が移行しなければならないかを含め、各日本語教育機関などに配置される公認日本語教師の割合や配置を求める機関などについては現在検討しているところです。
日時9月9日


「今のところわからない」ということです。

これからは法案を作成する段階になると思うのですが、こんな大事なことがまだ決まっていないようです。

また、ここでは「割合」という言葉が使われてますが、どうなのでしょうか。


「文化庁が今の告示校の現職教師全員が公認教師になる必要はない」と言っているのは先月8月20日以前の話なんですね。

確かにそれまでは現職に限らず資格保有者は自然に国家資格に移行するという話の流れでした。


しかし、8月の報告書で全てが覆ったのです。


信じられないかもしれませんが、文化庁はJEESの意向を完全に無視してこの報告書作成に踏み切っています。

だから現資格保有者、とりわけ検定合格者に対する言及が全くなくJEESはこの報告書に猛反発しているようです。



<国をあてにしてもダメ>

僕はベテランの不勉強な先生たちが篩にかけられるのは悪いことだとは思っていません。


教師なら教えるためにまずは勉強して一定の水準を示せというのも筋だというのは理解できます。

しかし、今回は明らかに国家による民事介入であり、民業圧迫だし何より1番割を食うのはこれから養成講座や検定試験を受けて告示校で働こうとしている人たちです。

これから日本語教師になる人は今年検定試験に合格、または養成講座を終了したとしても令和6年には無効になってしまうかもしれないのです。

そうなるとまた国家資格を慣れない授業を受けながら、勉強し合格しなければなりません。

新人の先生に配慮がなければ負担は増大し、優秀な先生は入って来なくなることでしょう。

そして検定試験講座や養成講座を開講している学校の中には

「国家資格に移行する前に検定合格を目指そう」
「今日本語教師の資格をとっても国家資格に移行できる」

それを謳い文句にして受講生を募っている日本語学校はもし間違っていたらデマでは済まされません。


そうやって金銭を受け取っていれば詐欺罪に問われますので、即刻宣伝を見直したほうがいいでしょう。


少し前まで「日本語教師が国家資格化すれば待遇が上がる」という楽観論もありました。

しかし、今回の報告書ではっきりしたのは待遇改善どころか国家資格化すれば現職教師もこれから日本語教師を目指す方も負担が増えます。

(報告書には公認になれば待遇が改善する」「予算で給与を上乗せする」などとは一言も書いていません)

万が一国が日本語教育に予算を割いたところでそれが給与に反映されると考えるのは早計です。

もちろん、告示校で働く現資格保有者が全員公認に移行しなければならないと完全に決まったわけではありません。

文化庁の回答は「(移行できるか否か)まだ決まっていない」ということでしたから、何らかの優遇措置が発表されるかもしれません。


でももし違ったら?

変に楽観視するより最悪の事態を想定しながら動いていったほうが後々ダメージも少ないのではないでしょうか?

こんなチグハグな国家の政策を全面的に信用している先生たちのスタンスが僕にはよくわかりません。


教育のオンライン化、国家資格化、出稼ぎ留学生問題、

色々深刻な事態に陥っています。

くれぐれも今の状況を甘く見ない方がいいですよ。

2021.09.12 | コメント(0)
コメントを書く

お名前

メールアドレス(非公開)

ウェブサイトアドレス

コメント

この記事へのコメント
テキストや画像等すべての転載転用販売を固く禁じます
Copyright © 日本語3.0 All Rights Reserved.