読後 「日本語の教科書がめざすもの」 @  〜「みんなの日本語」と「げんき GENKI」〜|日本語3.0

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読後 「日本語の教科書がめざすもの」 @  〜「みんなの日本語」と「げんき GENKI」〜

先日、僕はこんなツイートをしました。



絶対こうすべきだと思うんですよね。

多様化する学習者にとってはもちろん、先生だっていろんな教科書を触っていろんな教授法を勉強した方が絶対に役に立つわけだし、適した教科書で教授法を磨いていけばスキルも向上すると思うんですよね。

そこで今回は「日本語の教科書がめざすもの」で様々な教科書を比較検討し、我々は教科書とどう向き合っていくべきなのかを考察してみました。

『日本語の教科書がめざすもの』


まとめた内容は以下の3つです。


1、教科書の特徴や目的
それぞれの教科書についての目的や理念、学習者にどうなっていて欲しいのか。

2、使用方法
教科書をどのように使えば有意義な授業ができるのか。

3、課題点
その教科書を使用していて感じる主に現場日本語教師や学習者からの声からの課題。


本書をもとに授業、教科書、教師ぞれぞれの役割について考察したいと思います。


<「みんなの日本語」〜最もポピュラーな文型シラバスの教科書〜>
『みんなの日本語』

言わずと知れた代表的な日本語の教科書でオーディオリンガルアプローチが主流となっている時代に作られた教科書で、いまだに国内外の市場を占有している教科書です。

「新日本語の基礎」は「みんなの日本語」の前身です。


1、教科書の特徴

 代表的な文型積立型の教科書であるため文法理解に重きを置いてある教科書です。教師の役割としてはイラストや実演で場面を学習者に想起させ実際の場面でどう使えばいいかを教授する役割が求められます。


2、使用方法

@新語の導入
 絵カードなどを使い、動詞や形容詞であれば付属する助詞も回答させます。

A新文型の説明
 教師かビデオを見せて行い、場合によってはイラストを用いたり教師と学生が寸劇などを行い、説明を行います。

B基本ドリル
 教科書の新出語彙のページと練習Bのページを見てオリジナルのドリルを教師が作成する。ただし、あくまで変換練習など機械的にこなす練習にとどめ、意味までは考えさせない。学習者の負担を減らし、後で行う運用練習のための下準備にとどめます。

C文型提示
 練習Aの文型を提示し、教師は学習者がドリルに取り組みながら文型、形を認識することができるように配慮します。

D文の意味を考えながらドリル練習
 付属の標準問題集の問題などをアレンジし、意味がわからなければ解けない問題を出題します。
 教師がキューを出し、学習者が答えるというもので、例えば第6課「私は〜を〜ます」の文型を取り扱う場合絵カードを見せて動詞の前に助詞「を」をつけて文にする訓練をします。

教師:(絵カードを見せて)「ご飯」
学生:「ご飯を食べます」

教師:(絵カードを見せて)「水」
学生:「水を飲みます」

次に学習者がスムーズに回答できるようになったら次に教師は絵カードを提示せず名詞を言い、学習者はそれに該当する動詞を助詞付きで回答します。

やっていることは先程の練習と同じで違いは絵カードを見せるか否かだけなのですが、前者の練習では学習者は絵を見て、@どの同士と結びつくか頭の中の選択肢から選ぶ、A助詞は「は」か「が」か「を」なのかを選ぶ、という変換練習を行います。

それに対して後者の絵カードなしの練習では@「Gohan」という音を聞き取る、A「Gohan」→「ご飯」→Rice(母国語)という意味を結びつける、という2つの段階が加わることになります。

絵カードを提示せずより現実に近づける、このように階段を一緒に上がっていくような意識で少しずつ難易度を上げていくことで運用能力向上を目指します。


E基本文型確認
 文型と例文を音読してもらい、各自で確認してもらう。

F場面会話練習
練習Cのイラストを見せ場合によってはヒントを出しながら学習者に文型を発話してもらい、会話する。

練習Cのイラストのみを見せて本冊の会話文は見せません。学習者に絵を見せどんな会話をしているのかを予想させ、引き出した会話を教師が板書し、全員でリピートします。
その後時間が余れば語彙を入れ替え、会話練習をします。

G会話
 最初にDVDを見せて会話を確認し、必要に応じて説明やQ &Aを行います。
 その後言葉や場面を入れ替えて学習者それぞれがオリジナルの会話練習、発表、フィードバックを行います。この時適切に会話文を作成できていれば運用力がある程度身に付いていると考えていいでしょう。



このように文法の説明をして学習者に文法と意味を結びつけ、場面を設定しどんなシチュエーションで使用されるのかを絵カードや映像、教師によっては寸劇で示すことで意味と結びついた文法をどんな場面でどのように使用すれば良いのかを示します。

この流れを汲むことで学習者に運用力を身に付けさせるのです。



3、課題

文型積立型の教科書なので、文系がまとまっており学習者が文型の構造を後で見直すのには適しています。

反面、文法説明書がなければ「一人でどう勉強したらいいかわからない」という学習者の声も聞かれます。

また、教師がこの教科書を使って運用練習やコミュニカティブな活動をしようとすると授業準備に時間がかかります。

良く言えば教師のクリエイティブ性が発揮できるのですが、逆に教師によって差が出てしまい、特に新人教師の負担増の原因となり若手が育つ前にすぐに辞めてしまうという負の側面が現場では問題になっています。

新人の先生が慣れない説明を試みればミスも当然出やすくなる状況は学習者にとっても不健全でしょう。

このように日本語業界は教師の負担が重いため新人がすぐに辞め、育たないまま入っては辞める、という教師にとっても学習者にとってもマイナスのサイクルを長年繰り返していました。

さらにせっかく教師が時間をかけて準備をしても後で見直したときに教科書を見ただけではどんな場面でその文法を使えばいいか想起できる作りにもなっていません。


以上のことを鑑みると近年増加する独学者には適しているとは言い難いでしょう。



<「げんき Genki」英語圏で最もポピュラーな教科書>
『げんき GENKI』


1、教科書の特徴や目的

関西外国語大学の教員が来日した短期留学生のために制作を思い立ったもので、元々何かの理論をもとに作られたわけではありません。

とはいえこちらも文法シラバスの影響が色濃く残っていますが、1番の特徴はなんと言っても英語での説明が主になっている点です。


説明も詳しく平易で練習量が多く順にこなしていけば長い文が発話できるような構造になっています。

C Dがあれば一人で勧められるので独習者にとって最適なテキストであると考えられます。

また、適切な形でペアワークが導入されており、教師は教科書を辿るだけで授業を進めることができ、みんなの日本語に比べて授業準備に負担がかからないように改良されています。


2、教科書の構成
「げんき」は大きく「会話・文法編」「読み書き編」「巻末」の3つから構成されています。

@会話
まず学習者に文法項目を予習してきてもらいます。この時理解しやすいように文型と英語で文系の説明がしてあります。

A単語
その課の会話と練習に出てくる単語全てがまとめてあります。学習者はできれば事前に確認して授業に臨むことが理想です。

B文法
その課で取り上げられている文型は全てまとめてあり、学習者は授業前に予習してくることが求められます。

C練習
基礎から応用まで徐々に難易度を上げていく形で出題されており、問題を順にこなしていくだけで長い文を理解、アウトプットできるようになる作りになっています。

Culture note
その課のテーマに即した日本独自の習慣や文化について解説されています。短期留学生が日本での生活に困らないように実践的な内容が多くまとめられています。


3、課題点

文法の説明が英語でわかりやすく説明しており、英語圏で授業時間外に日本語に触れる機会のない海外の独習者にとって最適なテキストだと考えられます。

そのため主に海外で使われています(米国の大学市場1位)が、国内の学校でも近年来日が増加するネパール人留学生向けにも使用可能だと考えられます。


実際「みんなの日本語」と「げんき」を使ったことがある学習者によると「げんき」の方が独学で使いやすいという声もありました。


ただし、英語が通じる学生のみに有効でベトナムや中国からの学生には適さないため、一人でも非英語圏の学生がいるクラスでは導入が難しいでしょう。


また教師からすると文法や語彙の導入説明に授業準備を費やす必要がなく新人教師の負担軽減につながると考えられます。


「みん日」同様、その文法を適切な場面で発話できるか、いかにして学習者に運用力を身に付けさせるのかが教師の課題になってくると考えられます。


他にもペアワークを指導したり、会話のフィードバックで他の表現を学習者から引き出すなど学習者の語彙を広げる役割が求められるでしょう。


問題点としてはもともと構造シラバスに沿った教科書であるためその課の到達目標などがわかりにくくなっている課も散見されます(第9課「かぶき」など特に)

学習者が復習のために見直す際に不便かもしれません。


また練習にある聴解問題は聞かなくても問題文やイラストを見ればわかるような問題もあり、こちらも改良の余地があります。


2021.02.16 | コメント(0)
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