先日、僕が属しているFacebook グループ「日本語教育能力検定試験を語ろう会」で著作権についての話が出ました。
「日本語教育能力検定試験を語ろう会」
https://www.facebook.com/groups/Talks.on.JLTCT
どうやらグループ内の書き込みで「SNSで問題の一部でも写真でアップしたりするのは違法だ」という主張があったのですが、その根拠になっている写真がこちらです。
受験者の方に教えていただきました。本当に「引用禁止」なんてことが書いてあるんですね。引用は著作権法で認められた権利で、無断ですることができます。JEESにはこのように書く権利はあるかもしれませんが、受験者がそれに従う義務はありません。 pic.twitter.com/sc23USb4xP
— Yoshifumi Murakami 「ハナキン」の中の人 (@Midogonpapa) October 29, 2020
これは日本後教育能力検定試験の問題用紙なんですが、確かにはっきりと「引用禁止」と書かれています。
試験の問題文やブログ記事をSNSでアップするのは違法なのでしょうか。
SNSなどテクノロジーの発展に法整備が追いついておらず、知らず知らずのうちに違法行為をしているということは多々あるのでちゃんと理解した上で行動しないとあとで重大なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
そこで今回は絵や文章、試験問題など著作物をSNSに投稿する際の注意点について述べたいと思います。
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その話をする前にSNSと著作物の定義から触れたいと思います。
1、SNSと著作物の定義
SNSとはどのようなものかといえば次のように定義づけできると考えられます。
・Webサービスであること
・双方向的なコミュニケーションができる
・社会的なつながりを構築できる
次に著作権の定義ですが、こちらは著作権法と言う法律に基づいたきちんとした定義があります。
すなわち「思想感情を創作的に表現したもの」であり、著作物を捜索した人が著作者、著作者の持つ独占的排他的許諾権と創作者の人格に関わる権利が著作権という権利として規定されています。
端的に言えば自分の意見や感情を創意工夫によって表現した生産物で、動画や写真、文章がこれに該当します。
利用するには原則「公衆送信」つまり、公表されたものに限られ、その許諾権は創作者本人のみです。
2、SNSと著作物の繋がりでは次にSNSと著作権がどのようにつながっているのかを見ていきます。
著作権法でいう「公衆送信」は私的または家庭内での会話以外全て「公衆送信」されたとみなします。
従ってSNSがウェブサービスであるためSNSを通じて発信されたものは当然公表された著作物ということになりますので著作権法を守らなければなりません。
一方問題集や試験問題が必ず著作権になるとは限りません。
低学年向けの漢字ドリルや「1+2=」などのあまり工夫の余地のないものは著作物とは言えませんが、文章問題など文章表現が多様になってくる試験であれば著作物ということになります。
従って日本語教育能力検定試験は著作物と言え、試験問題を作っているJEESは著作権保有者ということになりそうです。
3、著作物を無断で使用してもいい場合
先ほど著作物を使用する場合は原則著作者の許諾が必要と書きましたが、次の4つの点に該当する場合は無断で使用可能です。
・私的利用
・授業のみで使用する教材をコピーして配布
・ネットオークションでの商品画像掲載(これは知らなかったです!)
・引用する場合
今回のそもそもの問題は4つ目の引用を巡っての議論になるのですが、引用は文化庁が定めている以下のような条件を守っていれば違法にはなりません。
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
「著作物が自由に使える場合 | 文化庁 」
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
上の4つの条件を満たせば著作者に無断で引用することができます。
考えてみれば当たり前で、もし論文や著書、創作物を作る場合に全て著作者の許諾を取っていたら研究なんてできません。
こうして考えるとFacebookやTwitterで問題文の一部(全部ではない)をアップして議論するくらいなら引用の範囲内であり著作権違反とは言い難いでしょう。
ただし、無断転載はダメです。
転載とは引用のように一部ではなく全てをコピーして使用することで、これだと著作権者の了解が必要です。
許可なく使用し、販売すれば違法になるのでくれぐれも気を付けましょう。
4、利用規約
あともう一点確認しなければならない点は利用規約です。
どのような著作物にも独自の利用規約が定められており、利用開始時にその規約に同意しなければサービスを利用できません。
僕は養成講座組なので日本語教育能力検定試験についてよく知らないのですが、もし利用規約にこの引用禁止が記載されており、それに合意しなければ受験できないという形式であれば引用も禁止になります。
Twitterでリツイートという機能がありますが、あれは完全に複製、転載に当たるので拡散させることは著作権法的にはアウトです。
しかし、Twitterは投稿されたツイートについてリツイートされることが当然に予定されているツールですから、Twitterに投稿されたものは原則として権利者がリツイートを許諾している(Twitterの利用規約に合意して使用している)と解することができます。
従ってみんなリツイート機能をただ使うだけでは違法にならないのです。
一方、受験前にそんなコンセンサスを取る必要がなくただ冒頭のように問題用紙(?)の表紙に一方的に書いているだけであれば引用はOKになります。
そもそも著作権法は権利者の利益を守るために作られた法なのでもし裁判になるようであればJEESはSNSで引用されて被った金銭的な損害について説明しなければならないと思うのですが、まあ多分できないですよね。
僕も今回初めて知ったのですがJASRACは自分たちが管理している歌をSNSで無料で投稿できるように規約を改定しているようです。
JASRACが無料で音楽を投稿できるSNS
https://www.jasrac.or.jp/news/20/ugc.html
こうすればみんなが無料でSNSで音楽を拡散していけば曲の認知度も上がり、JASRACはマーケティングをかける手間も費用もかけることなく利益を上げることができます。
同じようにSNSで問題文が拡散されて議論が活発になれば試験の認知度も上り受験者も増えると思うのですが、それを禁止させるJEESの意図は謎です。
<参考URL、文献>
「SNSを適法に利用するために」
https://www.chart.co.jp/subject/joho/inet/inet38/inet38-1.pdf
Copyright Q&A Copyright Q&A 著作権なるほど質問箱
https://copyright-qa.azurewebsites.net/Qa/0000017
むらログ:引用は泥棒ではない
http://mongolia.seesaa.net/article/468447442.html