なぜ中級になると学習者の意欲が低下するのか。|日本語3.0

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なぜ中級になると学習者の意欲が低下するのか。


「初級の学習は学生たちのモチベーションが続くけど中級になると
 途端にモチベーションが落ちてしまう」

日本語教育現場で働いている教師の中にはそのような感覚を味わった
教師が少なくないのではないだろうか。


もちろん、教師や教育機関それぞれの力量にもよるとも考えられるが、
大学でも日本語学校でも様々な教師が様々な手法で教授しているため
これらの教育機関全ての教師の質が低いとは考えにくい。


初級に比べて中級の教材研究や指導法が遅れているのは事実であり、
同様の感想は日本語学校だけでなく大学職員からも聞かれる。

筆者の大学生時代、留学生の友人たちも
「授業が面白くない」と語っていた。


筆者が勤めていた日本語学校でも多くの日本語教師が
中級になると学生の学習意欲が低下すると感じており、
実際に学生たちの出席率が低下するのも中級になってからである。


日本語教育機関で中級日本語学習者の意欲が低下する要因はなんだろうか。

今回はその原因について考察し、総論をまとめた。


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中級になると学習者の意欲が低下する原因として
主に以下のようなことが考えられる。

1、教室授業の構造上の問題

2、中級教科書の問題



以下、順に見ていく。


1、教室授業の構造上の問題

まず考えられるのは教室授業の構造である。

教室授業は一度授業に遅れはじめるとわからないまま
授業が進んでいってしまう。


言うまでもなく中級の授業に学生がついていくためには初級からの
積み上げが肝心であるが、初級のうちに学習に遅れが生じると
当然中級での授業にも支障が出る。


特に国内の日本語学校の学生は学業の他にアルバイトも兼務している
学生が多くいるため、仕事での疲れや怪我、睡眠不足で
授業を休みがちになる学生が多く散見される。


最近は非漢字圏の学生が増えてきたが、時代の変化に対応せず
漢字圏の学習者が主だった頃の教科書やカリキュラムで対応していれば
初級でつまずく学生が増えるのは自明である。


中級の授業についていけない学習者が増えれば
初級に比べて中級の授業に不満を持つ学生が増えるのは当然だろう。

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2、中級教科書の問題

日本語学校の中級の授業だけでなく、経済的に余裕があるはずの
有名私立大学や国立大学で行われている授業でも
学生の授業に対する満足度は高くないと言う研究結果もある。

「中級日本語学習者が望む学習とは何か」
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/4/49291/20160528095643200196/bhe_008_061_072.pdf

こういった大学に通う留学生は日本語能力も一定程度高いはずで、
中級レベルの授業に全くついていけないと言うことは考えにくい。


では学習意欲が高くないのはどういった原因があるのだろうか。

先ほど挙げた論文をもとに考察した。

内丸(2012)は岡山大学在学中の留学生(中級レベル)、36人を対象に
アンケートを実施した。


質問項目は以下で、初級授業と中級授業、それぞれにの授業について
1〜5の数値で学生が評価したもので1が「思わない」で5が「強く思う」である。

⑴自分の力が伸びていると感じるか。
⑵授業は面白いか。
⑶教師の教え方に満足しているか。
⑷教師の説明はわかりやすいか。
⑸教科書の説明はわかりやすいか。
⑹教科書の内容は面白いか。
⑺教科書の文法や文系の練習問題は面白いか。
⑻授業の進み方は適切か。
⑼勉強しなければならないことが多いと感じているか。


このアンケートの結果が以下である。

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「学習項目が多い」と言う質問以外全て
中級授業に対する評価は初級より低いことがわかる。

ここでもやはり中級の授業は学習者の満足度が低いことがわかる。


初級の積立が原因ではないとすれば大学における中級者の
学習意欲の低下の原因は何であろうか。


このアンケートで特徴的なのは「教科書の内容は面白い」と言う項目に
5評価をつけた学生が6%しかいなかったと言うことである。


これは評価4、評価3を合わせた全ての項目の中で最低の数値である。


加えて「教科書の説明はわかりやすい」「教科書の練習問題は面白い」
と言う項目においても5評価をつけた学生がそれぞれ11%、14%しかおらず、
こちらも他の項目に比べて著しく満足度が低い結果となっている。


教科書に関する評価が他の項目より著しく低いと言うことこそ
中級授業全体に対する満足度低下の原因だと考えられないだろうか。


いくら現場教師が創意工夫を重ねても素材である教科書の内容に
興味が持てなければ学習項目が身につかないのも納得できる。


岡山大学の留学生は「ニューアプローチ中上級」と
「コンテンツとマルチメディアで学ぶ上級へのとびら」を使用している
とのことだが、実はこの教科書に特別問題があるのではなく
中級で使う教科書は総じて学生からの評価が低いのである。


筆者も日本語学校で多くの学生を相手に中級授業をこなしてきたが、
実は多くの学生たちが「教科書は面白くない」と漏らしている。


なぜ、中級の教科書は総じて満足度が低いのだろうか。


考えられる原因は日本語の教科書を作る上で、
文型の難易度や頻出度を始め、様々な配慮が必要である。

一つの教室には国籍も年齢も文化的背景も趣味趣向も違う
学習者が集まる。


そのため、宗教面、国籍面、政治面、様々な分野に配慮した
教材づくりが求められる。

日本語文法や語彙だけでなくこれらの要素に配慮するのは至難の技で、
様々な要素に配慮した結果、当たり障りのない内容になってしまいがちである。


特に長文読解では興味のある内容や強い主張があれば当然理解しやすくなり、
わからない単語や文法も類推することも可能になるが、
教科書が決まっていると興味のあるコンテンツで学ぶことはできない。


内容もメッセージも主張もない長文をずっと読まされれば
学習者の意欲が低下するのも無理はない。

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脳の栄養素であるDHAが豊富に含まれている油です。




<所見>

日本語を流暢に話し、日本語能力がすぐに伸びる学生の多くは
日本のアニメやドラマなどサブカルチャーに強い関心がある。


中には日本の歌だけで日本語を全部覚えたと言う学習者もいる。

これらのコンテンツは主義主張の強い、尖った内容で
尖った内容であるからこそ強いメッセージとともに
文法も語彙も覚えられるのだと考えられる。


前述したが、一斉授業の場合、学習者一人一人の趣味趣向に対応することは
ほぼ不可能なため、かえって学習者の成長を妨げてしまう。


初級の文型がある程度積み上がった段階で「日本語を勉強する」ことから
「日本語で勉強する」段階へと移行すべきである。

学習者がネットでそれぞれの興味を持てるコンテンツを見つければ
学習者は自ら学んでいくのである。


現在、ネットには大量のリソースがあるため中級では学習者のレベルや
趣味趣向に合ったコンテンツを提供することが求められてくるだろう。


そもそも教育の意義が学習者に社会で生きていくための知識と技能を
身につけさせ自立させることなのであれば、教師の役割は
手厚く教えるのではなく自立のための手助けに注力すべきである。


特に現在のように変化の激しい時代は常に行動し学び続けることが求められ、
学習者がより役立つコンテンツを学ぶためにまずは教師が率先して
学んでいくことが重要になってくると考えられる。


<参考文献>



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2019.07.30 | コメント(0)
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