文例から見る教科書の初級文型の問題点|日本語3.0

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文例から見る教科書の初級文型の問題点


学習者が習得において誤用を発するのは学習過程で
避けられないことであるという言説が一般的である。


これは様々な状況の中で様々な例文を聞いていく中で
帰納的に文法の概念を把握していくからだと考えられる。


だとしたら日本語教科書の例文も様々な形を並列しなければ
学習者が特定の例文しか目にできなければ実生活で別の例文を聞いたとき
に混乱をきたしてしまう。


もちろん、現場教師が授業で導入していけばいいのだが、
学習者があとで復習の際に見直した際に正しく理解し直すという意味では
誤解を生みにくい例文を複数揃える方が無難である。


学校に通わない独習者の存在を考えるとなおさらである。


そこで今回は下の論文をもとに教科書の例文の問題点を拾い、
その上で文例作成の上で必要な配慮について総論をまとめた。

初級文型の導入のあり方について : 学習者にとっての教科書の文例
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/5531/1/KJ00000201269.pdf


まず、文例作成をする際に必要な配慮は次の3項目が考えられる。

1、文型の意味を文例で的確に表され、類義表現について配慮されているか。
2、文例が日本語として自然か。
3、発話の状況が明確か。


以下、詳細を見ていく。


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1、文型の意味を文例で的確に表され、類義表現について配慮されているか。

例1「〜のに(逆説)」

以下は逆説の表現「〜のに」を使った教科書の例文である。

⑴「何度もノックしたのに返事がありませんでした」

⑵A:「昨日の試験はどうでしたか?」
 B:「一生懸命勉強したのに、できませんでした」

この例文を見て学習者が以下のような不自然な文を作成した(宮原1994)。

・私は映画が好きなのに、最近はあまり見ません*

おそらくこの学習者は「〜のに」を「〜けど」「〜が」と誤解したと
推測される。

「〜のに」の後件には前件から予想されるものとは食い違う事柄が
適用され、驚きや不満のニュアンスがあるのが特徴である。


したがって⑵の例文を

B:「一生懸命勉強したのに、風邪をひいてしまってできませんでした」

に変えることで誤文を防げる可能性は上がるだろう。

次は「〜つもりだ」「〜うと思っている」「〜たいと思っている」という
学習者が混乱しやすい文型の例文である。


A:「あなたは日本語を習って、どうするつもりですか」
B:「私は日本へ行こうと思っています」
A:「日本へ行って、何をするつもりですか」
B:「私は日本へいって、大学に入るつもりです」
A:「日本のどこの大学に入るつもりですか」
B:「まだわかりませんが、東京大学に入りたいと思っています」


A:できたら、将来も日本に関係のある仕事をするつもりです。


学習者がすでに付き合っている日本人の恋人がいる場合に

・私は将来彼女と結婚するつもりです。

というのであれば自然だが
まだ日本に来ていない段階で日本人の恋人もいない学習者が

・私は将来日本の女性と結婚するつもりです。

と言っていたとしたらやや不自然である。

「〜つもりだ」は他の2文型に比べて強固な意志や気持ちを含んでいるので
最後の例文に「まだわかりませんが〜と思っています」は伝わりやすいと
考えられるが他の例文は改善の余地があるだろう。

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2、文例が日本語として自然か。

例1「あなた」「〜人」


A:あなたはフランス人ですか?
B:いいえ、私はフランス人ではありません。アメリカ人です。

「あなた」というのはおそらく英語のYouの翻訳として日本語教科書に
登場し、定着したのだと推測されるが、同格、または目上の相手に対して
使用するのは失礼にあたる。


したがって学習者が誤解しないようにここでは
「あなた」の使用は控えるのが無難だろう。

また「フランス人ですか」という問いも不躾なニュアンスがある。


「出身」を導入し、以下のような例文にすればより自然な文になるだろう。

A:Bさんはフランス出身ですか?
B:いいえ、私はフランス出身ではありません。アメリカ出身です。


例2「まだ〜ない」


A:学生はもうみんな来ましたか。
B:いいえ、まだ二人来ません。


A:もう午後四時になりましたか。
B:いいえ、まだ四時にはなりません。


初級の教科書の多くはこう行った例文を採用している。
「まだ〜ていない」の形がて形導入後でなければならないため
このような形で導入しているのだと考えられる。

どちらのBの回答も「いいえ、まだです」の方が自然だろう。


3、発話の状況が明確か。

例1 指示詞「これ」「それ」


A:これは何ですか?
B:それは本です。

このような例文を読んだ学習者は「たずねるときは『これ』を使用し、
回答する際には『それ』を使用するのだ」と誤解しかねない。

きちんとイラストで状況を明示した上で

A:これは何ですか?
B:これは教科書です。

などの例文と合わせて掲載することが望ましい。


例2 「〜は〜にある」と「〜に〜がある」

A:本はどこにありますか?
B:本は机の上にあります。

A:机の上に何がありますか?
B:机の上に本があります。

「本は机の上にあります」「机の上に本があります」は明確に
状況提示しなければただ「本」と「机の上」を入れ替えただけだと
学習者は誤解してしまう恐れがある。


「AはBにある」はAがどこにあるかに焦点が当たっており、
(つまりAが存在することが前提)「AにBがある」は
Aという場所に何があるかという部分に焦点が当たっている。


この二つの違いを示すには

A:部屋に何がありますか?
B:机やパソコンがあります。

A:パソコンはどこにありますか?
B:部屋にあります。

など絵などを使って疑問文と同時に載せることで
学習者の誤解も防げると考えられる。


<所見>

以上、現行の教科書の例文に対して寸評を加えてきた。


いうまでもなく学習者にとって文例はその文型を理解するために
極めて重要なもので初めて目にした文例に不備があれば
その後の学習に支障をきたす恐れがある。


したがって教材作成者は学習者が予習や復習の際に教科書を見た際に
明確に帰納的に理解できるような例文を用意すべきであり、
教師は以上の点を踏まえて教科書に足りない例文を適宜
授業で提示していく必要があるだろう。


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2019.07.08 | コメント(0)
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