読後「日本語教育文法の現状と課題」|日本語3.0

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読後「日本語教育文法の現状と課題」


「日本語教育のための文法」に関する研究はもともと
日本語学発祥であり、幸村秀夫を中心に行われた。


幸村の死後、日本語学を日本語教育に生かす研究は滞ったものの
近年再びその必要性が高まってきた。


背景にあるのは漢字圏主体の学習者から非漢字圏の学習者主体へと移行である。


また実習生やアルバイトする留学生も増加し、
受験用ではなく職場ですぐに使える語彙や文法が必要になってきている。


加えて先日、改正入管法の成立によりさらに多くの
外国人労働者、学習者が増えることが確実視される。

このような学習者の多様化により、
再び日本語教育のための文法の研究が喫緊の課題となっている。


今回は庵の「日本語教育文法の現状と課題」を元に
現在の「日本語教育文法」の研究が現れた背景とその特徴、
今後の課題について述べる。


「日本語教育文法の現状と課題」
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/25453

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<現状日本語教育の問題点>

現在に繋がる形の外国人向けの日本語教育が行われるようになったのは
1960年代からだとされる。

その中心人物となったのは幸村秀夫で、幸村は大阪外国語大学留学生科で
留学生教育に関わり、教材開発と生成文法を含む当時の最先端の文法理論を
取り入れた文法論を展開していった。


日本語学と日本語教育の乖離を埋める研究は進み、
2000年代には庵ら編集の「日本語文法ハンドブック」が出版された。

<日本語文法ハンドブック>


しかし、それまでなされた文法研究もそれに基づいて出版された
日本語の教科書も日本語学的文法に依存した日本語教育文法であった。


例えば体系主義的なものである。

例えば「みんなの日本語」では「て形」の導入後「〜てもいいです」
「てはいけません」など「て形」の導入に引きずられたもので
実際の使用上の重要性に基づく根拠があるものではない。


反対に命令形が教科書に登場するのは比較的後になる。

近年増加している実習生やアルバイトをする留学生は職場では
緊急時に命令形の指示を受けることは多くあると推察されるため、
早期の導入が望ましい。


また推量の表現である「でしょう」と「と思います」が導入されているが、
「でしょう」がその形で使われることは極めて稀である。(庵 2012)


つまり「ね」や「か」などの終助詞とともに使われるのが一般的であり、
その上、「でしょう」が紹介されている項目で用いられている例文の
ほとんどが天気予報に関するものである。


日本語文法を体系的に教えなければならないという固定観念から
実際の運用場面を無視した構成になっているのだと考えられる。


<地域日本語教育との関係>

構成や内容だけではなく時間と分量についても再考が望ましい。


日本語教育は学校型の他に地域のボランティア団体が無償で
行なっているものもある。


しかし、学校型における初級終了の目安である300時間をそのまま
地域学習には適応できない。


地域日本語教室が仮に週一回の2時間だとすれば初級終了には3年を要する。


また山内(2009)がKYコーパスを用いて中級レベルの学習者の発話に現れた
形態素を挙げている。

<頻出の形態素>
・「へ」を除く大部分の格助詞、「は」「も」「ぐらい」「だけ」「とか」
「と」「です」「ません」「ない」「たい」「ようだ」「ている」「か」
「ね」「て」「けど」「たら」「たり」「とき」「ため」「でも」「えー」
「じゃあ」「それから」「で」「だから」「例えば」「あのー」「えーと」


初級で習得する語彙は現行教科書の語彙よりもずっと少なくてもいいという
ことを示唆している。


中でも受け身形は日本語学を体系的に教えるという観点から
直接受け身、間接受け身など全て導入するが、コーパスの調査によると
話し言葉における受け身は大部分が直接受け身であることがわかっている。


<コーパスによる調査>
受け身系使う頻度.001.jpeg


以上見てきたように現在の日本語教育は日本語学に未だに依拠した、
つまり活用形など全てを体系的に教えることに固執し、
現場での運用を重視した構成になっているとはいえない。


構成やその内容、分量と時間、全てにおいて
再考の必要があることがわかった。


今後日本で生活する外国人に有用な教育を施行するために
コーパスの調査結果を多用するなど最新の知見を取り入れることが必要だろう。


*noteでもブログと同じ記事の内容を整理して公開しております。
https://note.mu/hayato49

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2018.12.19 | コメント(0)
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