読後 『日本語教師のためのCEFR』 奥村三菜子  |日本語3.0

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読後 『日本語教師のためのCEFR』 奥村三菜子  


入管法改正が様々な物議を醸している。


受け入れ数の上限が不明なことや技能実習制度の継続、
企業や国民の受け入れ体制、意識の問題が山積している。


特に日本語は語種が多く、文法も複雑で習得に時間がかかるため
外国人が一から日本語を習得し日本人と日本社会を生きるには大きな困難が伴う。


「移民政策は取らない」

とする政府の公式見解とは裏腹にすでに移民流入が第4位となっている日本は
実質的な移民国家である。


このような移民国家を迎える際、我々はどのように移民と向き合うべきだろう。

それを考える上で、
密かに注目を浴びているのがCEFRという欧州発のガイドラインである。

『日本語教師のためのCEFR』 奥村三菜子


『SNSで外国語をマスターする冒険家メソッド』 村上吉文


<CEFRの概要と成り立ち>

CEFRとは
「Common European Framework of Reference for Languages, teaching, assesment」
の略称で複言語主義のことです。


ヨーロッパではそれぞれ多国籍言語であり、
習得言語も学習到達度も様々である。

ある学習者は本は読めるが会話ができない、
反対に会話は得意だが読解が苦手な学習者など様々存在する。


そういった中で目標言語だけでなく学習者に備わっている広義の意味での
言語能力を重視したガイドラインがCEFRである。


従来は全ての能力を目標言語に近づけることを前提にカリキュラムや
ガイドラインが組まれていたが、学習者の母語や他の言語も同じ
言語能力として認めるのがCEFRである。


日本語習得を目的としている中国人学習者が
読解の時に漢字を頼りに内容を類推するような場合がこれに該当する。


このように目標言語の足りない部分を別の言語能力で補うことが
CEFRで定められている言語能力である。


<CEFRが生まれた背景>

CEFRが生まれたヨーロッパでは常に多言語が行き交う。

日本人には想像がつかないが公用語がいくつも設定してあり、道路標識や通貨、
教科書など多言語で記されているものは多く存在する。


また過去ナチスによる迫害から世界大戦にまで至った反省から、
言語や文化に優越性を設けることの危険性を再認識した。

欧州評議会はこのような視点から全ての文化や言語は
同等であるという認識を持つに至った。


そうして創設されたのがガイドラインがCEFRである。


CEFRは言語は文化のうちの一つであり、様々な文化が共存するため
には必要不可欠だと言う多様性を重視した複文化主義が根底にある。


目標言語を学ぶことはその文化を学ぶと言うことであるが、
その国の文化だけに接することであり、ステレオタイプな考えに
染まってしまう恐れもあるとCEFRで指摘されている。


その点、複数の言語能力を尊重すると言うCEFRは
多様性を尊重しようとする現在の世界風潮に適合しており、
また留学生、実習生という形で多国籍な外国人を受け入れている
日本においても十分当てはまる考えだと言える。


<CEFRのアプローチと教師の役割>

CEFRでは行動中心アプローチが推奨されている。


日本の多くの日本語学校で採用されているコミュニカティブアプローチは
まず難易度に従って文系や語彙を導入し、運用を示し、練習して
実社会で使えるようにしていくアプローチである。


一方、行動中心アプローチでは文法や語彙に注意を払うのではなく学習者が
達成すべき目的や課題を元にどのような文型や語彙が必要になってくるのかを
考えるアプローチである。


例えば「郵便局で荷物を届ける」「チケットの予約を取る」という課題のため
どのような文型や語彙が必要になるのかを考えていくものである。


行動中心アプローチでは教師から受け身で学ぶというよりも
学習者が自発的に課題を見つけ、どのような文法を学べば言語活動が改善され、
課題達成に近づくのか知っている言語をどう生かすかという運用力が試される。


なぜCEFRでは行動中心アプローチが推奨されているのだろうか。


CEFRでは学習者を学習者として見ず「社会で何らかの活動をする人」
と考える。


欧州では様々な言語と人種が入り混じっているため、
同じ社会を生きている人間として見なす。


したがって言語を学ぶ場所は学校ではなく社会生活を通してであるため
より実戦に近い形の行動中心アプローチが最適なのである。


CEFRでは初級学習者も上級者も同じ「言語話者」だという位置付けになり、
学習者は自ら課題を設定する。

CEFRは学習者それぞれの課題や問題を解決するためのもので、
かつ実社会ですぐに応用できるものであるため、
学習者の動機付けが継続しやすい点が長所として挙げられる。


教師の役割としては学習者が課題を達成するために
どんな文型や語彙が必要かを掲示すればいいのかを考慮し、
課題遂行のための能力を育成することが求められる。


<所見>

移民問題は先進国共通の問題であり、韓国や台湾でもすでに
労働者の獲得競争が繰り広げられている。


しかし、拙速な移民政策は国民の混乱を招き、時に排外主義を助長する。

実際、ヨーロッパでは極右政党が台頭し、ブレグジットやトランプ政権の
誕生は移民に対する反発の面もあるだろう。


日本も労働者不足を補うため開発途上国から多くの労働者を
留学生、研修生の名の下に受け入れていることはすでに述べた。


すでに移民政策を採用しているヨーロッパから学ぶという意味で
CEFRの研究は有意義だろう。

次回は具体的にCEFRをどう授業に生かすのか、
検討を試みる。


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2018.11.22 | コメント(0)
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