読後 『SNSで外国語をマスターする冒険家メソッド』 村上吉文 A 〜SNA時代における教師の役割とは〜|日本語3.0

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読後 『SNSで外国語をマスターする冒険家メソッド』 村上吉文 A 〜SNA時代における教師の役割とは〜


村上先生の『SNSで外国語をマスターする冒険家メソッド』の書評の続きです。

読後 『SNSで外国語をマスターする冒険家メソッド』 村上吉文 @ 
〜オンライン学習で学習がどう変わるか〜

http://hayato55.com/article/184704773.html

『SNSで外国語をマスターする冒険家メソッド』 村上吉文


前回は学習環境がどのように変化しているか、本書をまとめました。


学習者が多様化しているため、それぞれの趣味や趣向に合った独学方法、
すなわちソーシャルメディアを使って語学学習を進める
ソーシャルネットワークアプローチ(SNA)が効率的であるという内容でした。


今回は学習環境が変化し、学習者が多様化している中、
語学教師はどのように変化していけばいいのかまとめました。


<教育の意義と教授法の歴史>

まず、そもそも教師の役割とは何でしょうか。

冒険家メソッドでは古今の偉人の言葉が引用され語られています。

「学校は人にものを教うる所にあらず、ただその天資の発達を妨げずして
 よくこれを発育するための具なり」
 〜福沢諭吉〜

「他人を教育することはできません。教育は生徒自身の経験を通して実現されます。
 その経験は完全に環境によって決定されるものであり、そこでの教師の役割は
 環境を組織すること、帰省することにあります」 
〜ヴィゴツキー〜

「私は弟子に教えることはない。彼らが学べる条件を整えようとしているだけだ」
 〜アルベルト・アインシュタイン〜


過去の偉人たちは先生に教えられて学ぶのではなく
自らの行動によって学ぶのだと主張しています。

つまり環境こそが一番大事なのだということです。


我々教師はとかくどう教えればわかりやすいのかと考えがちです。


それは教えなければ学生は学ばないという考えの裏返しだと思うのですが、
学生というものは意外といい環境さえ与えられれば自分で経験し、
学び、自ずと育つものです。


逆に我々教師は今まで一体どのくらいの時間と手間を
学ぶために最適な環境作りに費やしてきたでしょうか。


現在の日本語学校の状況を見ると残念ながら
十分手を施してきたとは言い難いでしょう。


ではSNA時代には我々語学教師はどのような学習環境整備に
力を注いでいけばいいのでしょうか。


それを明らかにするためにまずはSNA時代は教授法史上どのように
位置づけられるのか本書を元に書き出してみます。


・文法訳読法

江戸時代、蘭学や朱子学がオランダ、中国から輸入されていたため
外国で書いてある本の内容を訳すというのが外国語の学び方でした。

鎖国が行われていた背景もあり外国人と交流する機会はほぼあり得ず、
話す練習をする必要はありませんでした。

いわばこの時代の語学学習は「わかる」だけで十分だったのです。


・オーディオリンガルアプローチ

時代は下って第二次大戦後、徐々に国際交流が始まったため
「話す」必要に迫られて来ました。

そこで会話でよく使われる定型の形つまり文型を取り上げ
それを埋める形でコミュニケーションを図ろうとする方法、つまり
オーディオリンガルメソッドが主流となりました。

例えば先生が黒板に「This is 」と書いたら下線部を埋めたり、
代わりに学生がみんなで復唱したり、反復したりといった教授方法です。


「わかる」だけでは不十分でそれに加えて「言える」ことが
重視されるようになったのです。


・コミュニカティブアプローチ

オーディオリンガルで反応したり、言ったりすることが意識されたが、
それだけでは「話せる」レベルまで到達しませんでした。

学校の授業は戦後長らくオーディオリンガルメソッドを採用していましたが、
その中で話せるようになった人がどれくらいいるかを考えれば
成果のほどは伺えます。


オーディオリンガルでは文法や語彙の意味はわかるものの
それをどこで使えばいいのかがわからないのです。


実際に使えるようになるにはどうすればいいのかということで
場面設定というものが導入されました。


日本語教育では運用と呼ばれ、場面設定し、そこでどう使われるかを
学生を交えて実演する教授法、それがコミュニカティブアプローチです。


かくして「わかる」「言える」「話せる」語学教育へと進化したのです。


・ソーシャルネットワークアプローチ

文法訳読法からコミュニカティブアプローチまでで
「わかる」→「言える」→「話せる」と実際の場面で使える
外国語学習法へと進歩してきたことがわかります。


しかし「話せる」重視の練習をさせても所詮は練習であり、
実際の現場ではありません。

実際留学生たちは

「先生の日本語はわかりますが店長やお客さんの日本語がわかりません」

と教室と実際の日常会話との違いに悩んでいる学生も多くいます。


そこでソーシャルメディアで実際に世界中の人と繋がり、
生の日本語に触れることで学習していく、これがSNAの本質です。


現実社会で通用するコミュニケーションを育むためには
教室の中に閉じこもるのではなく実際のコミュニケーションの場で
コミュニケーションを測ることが大事だと本書で触れられています。


「わかる」→「言える」→「話せる」から「つながる」時代になったのです。


<SNA時代のおける教師の役割>

では最初の質問に戻りましょう。

つまり「つながる」教授法に持っていくためには我々語学教師は
どうすればいいのかという問いにです。


日本語学校は各学校ごとにカリキュラム項目が決まっているため
教師一人の裁量で教材を決定することはできないのが通常でしょう。


そういった状況を鑑みると
SNAを体系的にカリキュラムの中に取り入れるのは極めて困難だと言えます。


しかし、それでも教師自身が最新ツールを使って本質を理解し、
学習者に紹介することはできるでしょう。


例えば前回記事で示したようなfacebookの使い方もそうであり、
「instagramで●件のいいねをつける」というような課題を出してもいいでしょう。

後にマネタイズすることにも繋がり学習者の動機付けになるかもしれません。


また、本書では学校や自身の日本語コミュニティを作るためのツールや心構えや
ライブイベントの始め方にも触れてありました。

自分でコミュニティを作りたい場合は参考になる内容だと思います。


<所見>

以上、SNA時代における教師の役割についてまとめてみました。

ここで僕の所見を述べて終わろうと思います。


AIやネットによって半分の仕事がなくなると言われていますが、
日本語業界もその例外ではなくSNA時代には教師は不要になります。


もちろん、全員がいらなくなることはありませんが、少人数化し
今の役割とはだいぶ違った形になっていることは間違いありません。


本書ではSNSの正しい使い方を教師が学び学生に提示することが
大切だと説いてありますが、現在の箱物の学校でどうすべきか
という点においては触れられていません。


なぜなら、それらのツールの使用法を学生が学ぶと独学で学び進められるため
箱物の学校である必要はなくなるからです。


実際、ネットに繋ぐことで瞬時に優秀な先生に繋がれるため
学習者はみんなそちらの文法説明の動画を見るようになり、下手な先生の
授業に行く必要もなくなります。


作文の添削なんて日本語の先生がするよりLang-8で
ロジカル思考ができる普通の日本人に任せた方がいいくらいです。


多くの教師の仕事は減るまたは役割が変わることは間違いないでしょう。


僕が個人的に考えているこれからの時代の教師像は
何らかの教材やツールを作る人材であると思っています。


具体的には文法や語彙の説明をする動画を作るクリエイター、
プログラミングで日本語アプリを作ったり日本語プログラマー、
skypeやzoomなどで日本語会話をするオンライン教師、

という業態が考えられるでしょう。

学習者が多様化する中教師も多様化することが求められると考えられ、
教師はそれぞれ自分は何が向いているのかしっかり考えて
できるところから行動に落とし込んでいく必要があるでしょう。


現在こういったことに気づいて挑戦している教師や日本語業界の
関係者は現時点でほとんどいません。

みんな学校で教えるスタイルが当たり前だと思い込んでいる上に
最新機器の取り扱いに疎い先生が多いからだと考えられます。


一般にこの業界は薄給で激務というのが通例であり90%が
非常勤のママさん先生によって占められています。

そのため、若い先生が生活していくには厳しいと言われています。


しかし、この本でも触れてあった通り、若い世代はiphoneやiPadなど
最新機器に対するマインドブロックがありません。


今後、外国人受け入れが拡大すれば日本語の需要は高まりますが、
業界のほとんどが電子機器に疎い先生が多い、


そのため大きなチャンスと希望に満ち溢れているのがこの日本語業界です。

若い世代の先生も恐れずどんどん飛び込んできてほしいものです。


それでは!

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2018.10.20 | コメント(0)
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