読後「吾輩は猫である」夏目漱石 @ 〜作品を通してみる当時の人の生活と価値観〜|日本語3.0

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読後「吾輩は猫である」夏目漱石 @ 〜作品を通してみる当時の人の生活と価値観〜



「吾輩は猫である名前はまだない」

あまりにも有名な出だしから始まるこの作品は夏目漱石の処女作です。



有名であるものの読んだ経験があるという方は意外に少ないようですが、
当時の明治人の暮らしぶりが垣間見れる貴重な資料です。


まず目につくのは表記です。

例えばスピーチという意味の「演説」という漢字があるが、
あるところでは「演舌」と書かれています。

使い分けの基準は定かではありませんが、観衆の前でスピーチをするときは
「演説」を使い、ただ自分の意見を述べているときは「演舌」を使って
いたように思います。


他にも
「負けぬ気になって愚にもつかぬ駄弁を弄すれば何の所得があるだろう」
という文がありました。


いまなら「なんの利益があるだろう」という表現が妥当でしょう。


「所得」といえば現代は自分の給料や金銭がらみのことを指すが、
この時代の「所得」は金銭以外の意味でも使われていたようです。


また「こども」の漢字は現代では「子供」を使いますが、
この作品の中では全部「小供」と書いてありました。

おそらく「小さい共(とも)」という意味で書いていたのかもしれません。

他にも「部屋」を「室(へや)」や、薬の「効き目」を「利目」と
表記されていたりと漢字表記が揺れていました。


注釈には「当て字も多い」と書かれていたので、確固たる基準は
なかったのかもしれませんが作品を通して日本語の言葉の意味の変化を楽しめます。


<内容>
 
次は内容についてです。

一匹の無名の猫が「苦沙弥」先生という
中学校教師の家に迷い込み、拾われたところからこの物語が始まります。


苦沙弥先生とその家族や友人などの会話を通して人間社会を
ユーモアに満ちた表現で風刺、批評しています。


「くしゃみ」という名前がユーモラスですが、
モデルは漱石本人であると言われています。


苦沙弥先生は偏屈で見栄っ張りで、新し物好きで、
学問、絵画、何にでも手を出すが、すぐに飽きてしまい辞めてしまいます。


何一つものにならず、虚栄心が強く、
「勉強する」と家族にいって書斎にこもるものの、
いつも本を開いたまま書斎でよだれを垂らして寝ています。


学者や研究者には劣等感があるものの、
実業家は卑しみながらも羨望の思いを持っています。


 主人と妻、子ども、訪ねてくる友人など彼らとの会話や生活を通して
当時の日本人の価値観や生活習慣を垣間見ることができます。

 少し、明治の人の暮らしぶりをのぞいてみましょう。


車屋の「黒」という猫と会話したときのことです。

車屋というのはもちろん自動車ではなく「人力車」で、黒は学がないながらも
腕力が強く、主人公の猫はそれを軽蔑しながらも畏敬の念を払っていました。

そんな黒が今までどのくらいのネズミをとったのかという自慢をしてきた。

「人間ほどふてぇやつはこの世にいねぇぜ。
人のとったネズミをみんな取り上げやがって交番に持って行きやがる。
交番じゃ誰が捕ったか分からねぇからそのたんびに5銭ずつくれるじゃねえか」p18


ネコがとったのに「人がとった」と言っていますが、
この慣習はもっと興味深いものです。


当時は伝染病の予防のためにネズミを捕ることが推奨され、
捕縛したものには賞金を与えていたというのです。


当時の日本は衛生状況がいまほど良くなかったことがわかります。


次にこの時代の職業観やお金に対する価値観です。


この主人と奥さん、友人で会話をしている時に
どんな職業がいいかという話をしている場面があります。


主人の友人が以下のように述べます。

「それだから、実業家に限るというんです。
 先生も法科でもやって会社か銀行へでもでなされば、今頃は月に
 三四〇円の収入はありますのに、惜しいことで御座んしたな。」

と給料の話で盛り上がっているところがあります。

調べたところ当時の一円はいまの3800倍だそうです。
https://manabow.com/zatsugaku/column06/
つまり、三四〇円の収入といえば129万円の収入ということになります。
当時から銀行という職業は高収入だったことがわかります。


反対に教師は名誉職で実業家よりも収入が低かったようです。

主人が実業家を卑しみながらも羨望の思いを持っている所以です。

他にも主人が友人に脅され保険に入ろうか否か迷う場面もありますが、
この時代、すでに株や保険、サッポロビールと言ったものも出てきています。


当時からの時代の変化もみられますが、
現代まで変わらず、そのまま残っているものも登場します。

当時は農業国から脱し、近代資本主義が根付き、成長し始めた黎明期です。


そんな時代に日本人が何を捨てて、何を変えたのか。

作品を見て知ることは現代の閉塞した世の中に変革を
起こす上で有益なヒントになることでしょう。


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2018.06.14 | コメント(0)
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