インプットとアウトプットのバランス 〜教室では何をすべきか?〜|日本語3.0

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インプットとアウトプットのバランス 〜教室では何をすべきか?〜



前回記事ではインプットとアウトプットそれぞれの
効果を考察した。

「インプットとアウトプット、それぞれの効果」
http://hayato55.com/article/183145628.html?1526191796

クラッシェンはモニター仮説の中で
子どもが成長する過程で無意識的に学習して習得した知識と
外国語を学ぶために教室で意識的に学習した知識を区別している。


クラッシェンによれば意識的に学習した知識は身につかず、
発話をチェックする機能しかなく、習得に至らないと断じている。


しかし、現在このような立場に立つ人は少数で
筆者も日本語学校の授業を経て発話が上達している学生を
見てきているのでクラッシェンの主張は極端であると感じる。


今の所「教室での学習は語学習得の速度を高め、
最終的に高い成熟度で目標言語に近づく」(Long 1988)
という説で多くの研究者が一致している。


また、そんな教室での指導は教室外で豊富なインプットに
触れる機会があればより一層効果があるとされている。


では、教室で文法を教えることはどんな意義があるのか。

シラバスや教室活動でどう活用していけばいいのか。


今回はそれらを考察した。


以前、ある学生が

「ゲームをしたり、ドラマを見たりしていると
いつよく習ったばかりの言葉が出てきて勉強になります」

と言っていた。


この学生がゲームをするときに偶然いつも習ったばかりの言葉
が出るとは考えにくい。


教室で文法なり語彙をインプットしたおかげで
それまで雑音にしか聞こえなかった日本語の中から
意味として語彙や文法を聞き取れたということだろう。


学習者はこうしてインプットから知識を得て
やがてアウトプットへとつなげていく。


では、どういったインプットが効果的なのだろうか。


まず、文頭や文末にくる疑問視や終助詞は目立ちやすさから
覚えやすいことが確認されている。


筆者の経験でも終助詞は初級のうちから学生が「〜ね。〜よ」
と使いこなしているのを確認している。


他に習得しやすいものとしてはやはり頻出の文型や語彙が挙げられる。


動詞のグループ分けや「て形」の作り方など
例外もあり、複雑な文法法則であるにも関わらず
初級を終えるとほとんどの学習者が習得している。


これは「て形」が「てください」「ています」など多くの文型と
共起し、頻出度が高いためであると考えられる。


<シラバスはどうあるべきか?>

それではこういった点を踏まえ、教材やシラバスは
更新していくべきだろうか。


「受け身」は習得困難な文型のうちの一つされており、
筆者の体感でも中級になっても使いこなせている学習者は少数だと感じる。


しかし、コーパスの調査結果によれば会話内での受け身の頻出度は高い。



前述のように難しい文型であっても頻出であれば最初に導入すれば
定着もよくなる上、教室外での会話も理解できるようになると考えられる。



また、日本語教育現場では易しい項目から難しい項目を教えるのが
基本とされているが、文型によっては難しい項目を先に教え、
後に簡単な文型を教えたほうが定着がいいという実証結果もある。


例えば「ている形」を例にとると多くの教科書が
現在進行形の意味での「ている形」を導入し、
そのあとに結果の残存の意味である「〜ている」を
導入する教科書が多いようである。


しかし、現在進行の「〜ている形」の方は定着が早いにも関わらず、
結果の残存の「〜ている形」は一般に定着が悪いとされている。


したがって、「〜ている形」の結果の残存の用法から
教えたほうが現在進行と結果の残存の両方の定着につながると
考えられる。


なぜなら現在進行形の概念は多くの国の言語にあるため、
多くの学習者にとって定着しやすい、そのため
先に「〜ている=現在進行形」を教えてしまうと
その結びつきが強固になりやすくその後他の概念を導入しても
定着が悪くなるという指摘があるのだ(大関)。



<教室活動はどうあるべきか?>

第二言語習得論が学問として成立した当初、
オーディオリンガルメソッド(文型練習型)が主流だった。

しかし、
試験はできても適切な場面で適切なアウトプットができないという
批判からコミュニカティブアプローチが取られるようになった。


しかし、これもコミュニケーション重視であるため
文法の正確さの観点からやがて批判的な見方を取られるようになった。


現在の日本語教育現場では文法を使える場面を「導入」し、
できるだけ多くの例文を紹介、そして最後にアウトプットや
会話練習をするという前者二つのアプローチのいわば
折衷案が採用されている。


しかし、最近ではこの教授法にも批判的な意見が
なされている。


つまり、導入で意味をインプットし、例文で使える場面を確認後、
すぐにアウトプットの練習をするため、
意味と形が結びつかないまま文型練習ばかりしてしまうのでは
ないかという点である。


そのため適切な場面で的確な形でアウトプットできない
と指摘されている。


意味と形を結びつけるため
「処理指導(プロセシング・インストラクション)」
の導入が提案されている。(「運用」とも呼ばれる)

新しい項目の導入の後にインプットを理解させるものである。


例えば受け身文を授業で扱う際に導入の後以下のような写真を見せる。

game78-after.jpg

t「蛇は何をしていますか?」
s「え、あ、食べます」
t「そうですね。何を食べていますか?」
s「えーと、ワニ? 蛇はワニを食べます」
t「いいですね。じゃあ、ワニは?」
s「えーと、ワニは食べられます

このように同じような写真やイラストを何枚か用意し、
受け身形と意味、情景を結びつけるための練習をするのである。


イラストでなくとも実演してもらったりしても効果がある。


こうすることで形と場面、意味とが繋がり、
正しく理解する助けとなると考えられる。


<参考文献>


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2018.05.10 | コメント(0)
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